キンドルストア対外価格差の不思議 印税の差分はどこに行くのか?

先日とあることがきっかけで、日本とアメリカのキンドルコンテンツの価格の比較をしてみたら、興味深い事実に気づいた。

日本での価格は$2.99(米国では99セント)
日本での価格は$2.99(米国では99セント)

上記はLMDPが販売しているコンテンツの一つであるが、アメリカでの販売価格は$0.99、つまり99セントだ。
画像は日本で友人が試験購入してくれた際に映してもらったもので、よく見ると金額は$2.99となっていて約3倍になっている。ところがこのコンテンツが日本で売れたとしても、入ってくる印税は変わらない。つまり$0.99の35%が規定レートで実勢として35セント。規定では売価の35%になるのだから、日本で売れた分に対しては3倍になっているはずなのだが、そうはなっていないようだ。これは確定できない理由があるのだが、それは出版社側からは売上がどの地域からあげられたものかどうかが分からないという点である。しかし、今回は日本にいる友人二人が購入をしてくれて、こちら側で売上に関する情報をチェックしていたが売上金額 (TOTAL PAYMENT)を販売数量 (NET UNITS SOLD)で割ってみるとやはり35セントになっている。

ではこの差分はどこにいったのか?

通信費の問題などがあるのは分かるのだが、それでもパブリッシャー側に十分な説明がされているとは思えない。
また契約改訂後は通信費を除いた正味売上金額に対する70%適用(ルールを満たしたもののみ、それ以外は現行と同じ)となっているが、それでこの問題が解決されるとは思えない。

これまでは問題の無かった複数アカウントを一つに統合しろといっておきながら、新規アップロードをしようとする際に難癖をつけて出版を差し止めたり、世界中からコンテンツを販売可能にすると言ったかと思うと対応言語(英語・ドイツ語・フランス語)以外の出版物を急に認めなくしてみたり、挙句の果てには海外へのコンテンツは出版社が知らないところで価格を吊り上げていたりと、やりたい放題になっているように思える。大体アマゾンが自身の(パブリックドメインなどの)コンテンツは無料で提供しておきながら、他社に対しては99セントを最低価格として設定していることも公正な競争を妨げるものであるように思う。

またもう一つの大きな問題は、その無料コンテンツに対してかかっているはずの通信コストを本当にアマゾンが負担しているのか?ということである。筆者はこの点に疑念をもっている。つまり他のパブリッシャーが払っている通信費でアマゾンが無償提供しているコンテンツの通信費もまかなっている可能性があるのではないか。もしも実際にアマゾンが無償コンテンツを持ち出しで提供しているなら、その際の販売各無償ダウンロードに対する通信費を販売原価あるいは経費(販促費用など)で計上しているはずだが、それは誰にも分からないことである。大体世界の100カ国以上に提供しておきながら、コンテンツがどこで売られているのかも分からないというのはパブリッシャー側に対しての情報開示が少なすぎるのである。 垂直統合型モデルで囲い込みが出来ているからといって、あぐらをかいていたらその内手痛いしっぺ返しをくらうのは目に見えている。そのうち出版社の集団訴訟が起こってもおかしくないのではないだろうか。
(ちなみに筆者の友人で某国のFTC(公正取引委員会)からの派遣留学でアメリカの大学院で学んでいる者がおり、以前彼に状況を簡単に説明したところでは不公正取引に該当する可能性が高いとのことだった)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。