ソーシャルメディアをビジネスに (2) ゲーマー向け本物志向ブランド Razer の日本向けソーシャルマーケティング担当に就任

先のエントリーでも触れた、Razer (レーザー)というブランドがあるのをご存知の方がどれくらいいらっしゃるだろうか?

Razer はプロゲーマーが使用するような高性能のゲーム周辺機器(マウス、キーボード、ヘッドセットなど)を提供する本物志向のメーカーである。
ゲーム専門といっても、モバイル関連や最近ではコンソール向けの製品の開発などもしているから幅が広い。
例えばOROCHIというゲームマウスがあるが、これのキャッチコピーは「世界初のノートPC用ゲーマー向けマウス」である。
(上記のスクリーンショットのトップに映っているのがOROCHI (ネーミングはもちろん日本神話のヤマタノオロチからである レビューは4Gamerに詳しい)

先日あの任天堂でさえ赤字決算に転じるという報道が国内を震撼させ、再起を3DSにかける。マイクロソフトは体感型のキネクト、SONYはMOVEで任天堂の後を追いかけるが、果たしてそこに本当に楽園が開けているのかどうかは未知の世界だ。そして、カジュアルゲームとソーシャルゲームの台頭と、それの火付け役でもあるアップルの躍進。そして以前一度だけ仕事でお会いしたことがあるカプコンの稲船敬二氏は古巣のカプコンを辞め(詳細はこれまた4Gamerの記事「稲船敬二氏は,何を思い,何を考え,何を目指してカプコンを辞めていくのか。渦中の氏に直撃インタビュー」にて。これはすばらしいインタビューだ)、親交のあるナウプロダクションの大信英次氏は比重がどんどん高まる海外向けの開発戦略としてゴールドエンターテインメントを設立。まさにゲーム業界は大激動の時代に入っている。

このような時代にゲーム周辺機器メーカーのトップブランドとして確固たる地位を築きつつあるRazerの強みはマーケティングであろう。他社より高いものを売って差別化していく戦略を取る際には、品質を維持すること、明確な訴求力をもつこと、そしてそれらを推進するだけのマーケティング力をもつことが必須である。今回Razer社には、筆者のソーシャルメディア・ブロガーとしての立場のみならず、これまでエレコムやサイズといった大手の入力機器メーカーで開発や購買、営業を手がけてきた実績、そしてオンラインゲームの翻訳事業などを手がけた実績と語学力を評価頂いた。その結果、日本時間の12月1日をもって環太平洋を管轄するシンガポール・オフィスの下で日本市場向けのソーシャル・マーケティングを担当することとなったのでお伝えする。

1月に上梓する「ソーシャルメディア革命」では北米の最新ソーシャルメディア事情を詳しく伝えているが、海外では大手の企業が続々とソーシャルメディア・マーケティングを取り入れている。これにはソーシャルメディアと密接な関わりをもつSNS最大手のFacebookが企業ユースを積極的に支援している点が貢献しており、逆を言うと国内を代表する二大SNSのMixiやGREEがその点にはあまり配慮してこなかったという点が影響しているとも言える。(これについてMixiの創業者の笠原氏はITPROのインタビューに応じて、法人向けの対応の可能性も示唆している)

日本ではまだまだソーシャルメディアやソーシャルメディアマーケティングに関する正しい認知が成されているとは信じがたいが、一ジャンルでのトップメーカーが世界戦略の一環としてソーシャルメディア戦略を用いて、それを日本の市場にも適用させたいと考えるのは当然のこととも言える。これから海外メーカーが日本進出の際にソーシャルメディアを活用する事例は増えていくに違いない。そして、逆もまた然りであるSONYがアメリカでソーシャルメディア部門を擁して積極的にマーケティング活動を行っていることは過去にもお伝えした通りだ。(そして、もちろんソーシャルメディアマーケティングというのはただツイッターをすることではない)

Razerはこれまでにもソーシャルメディア・マーケティングを積極的に取り入れてニッチな自社ブランドを確立することに成功しており、ネットユーザーと非常に親和性の高いオンラインゲーム市場に目をつけ、WeMadeFox(韓国のプロチーム、先日の東京ゲームショーで日本のトップチームとのエキシビジョンマッチを行った)やPMS* Asterisk(シンガポールの女性オンラインゲームチーム)などをスポンサーしたり各種ゲーム大会を後援したりしている。

TGSにて
TGSにて

asterisk 公式サイトより
PMS* Asterisk公式サイトより (右から二番目がTammy

このPMSの創業メンバーでもあるFurryfish*ことTammy Tangはプロゲーマーでありながら、Razer のソーシャルメディア部門を統括しているというから、Razerのソーシャルメディアへの入れ込み、そしてブランド確立のためのマーケティング戦略は高く評価できる。ちなみにRazerは前作が一部のファンにカルト的に支持されて12月17日から新作が全国公開される映画「トロン:レガシー」(原題「Tron: Legacy」 配給:ディズニー)とタイアップした製品を発表しており、先日六本木で行われた記者発表にも商品を展示している。

4Gamerより

今後は主にFacebookやMixiでのファンページを設立し、そこから徐々にファンに向けてのアプローチを開始していく予定だが、当意力ブログとも連動する方策を考えているところである。

ソーシャルマーケプラン考え中の図
ソーシャルマーケプラン考え中の図(笑)

w/ Moray

耳にしているのは日本未発売のイヤフォンセット “Moray

写真撮影:Keith Hiding

いずれにせよ、来年日本が「ソーシャルメディア元年」を迎えていくことができるように草の根ブロガーとして貢献していきたい所存である。

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。