第1章 電子出版とは何か – 電子ブック開国論 (3)

電子出版~画期的なビジネスモデル(*この内容は11/21/09のブログエントリーの再掲載です)

サブプライムに単を発し、リーマン・ショックで世界を不況のどん底に落とし込んだ世界恐慌のせいで、巷には怪しいビジネスの話が溢れかえってている。特にこれくらいの不況になると詐欺まがいの事件なんかも多く、結局儲かるのは詐欺師だけだということになりかねない。火事場泥棒という言葉があるが、こういう不況時に相手を騙してお金を儲けるというのは本当にあくどいことだと思うが、それでも自分だけ得したいという人間がいるのも事実だと思う。

ただ、玉石混交という表現があたるかどうか分からないが、そんな話に紛れて本当に得なビジネスアイデアや案件なんかが存在することも又事実だし、逆にこういう経済乱世のような時代だからこそ余計に少し目鼻の利く人間であればしっかり儲けることもできるかも知れない。いわば戦国時代、下克上の世の中ということである。誰もが資金難にあえぐこのようなご時勢には現金をもっている人間が更に強くなるのも事実なようで、世界でも有数の大富豪であるウォーレン・バフェット氏率いるBerkshireHathawayはこんな状況下でも着実に投資家に利益を還元しているようだ。これからご紹介する電子出版という聞き慣れないビジネスモデルの登場は既存の出版業界を震撼させると言われている。下記は筆者が2009年の春に電子出版に注目した際にリストアップした項目であり、どれもこの画期的なビジネスモデルの利点を如実に示すものである。さぁ、どういう風に聞こえるだろうか。まずはじっくり考えて頂きたい。

1. 在庫リスクは一切無し、つまり在庫は陳腐化しないし保管費用などの在庫管理コストも発生しない。
2. 販売後の返品率も極度に低く、返品の際にも手間がかかることはない。(購入者は1週間の間に返品をするかどうか決めることができ、理由なく返品できる)
3. 取引先は超一流企業で債権回収時のリスクもなし。(支払い条件は45~60日)
4. 商品は即時に世界100カ国以上で販売可能。(ただし、言語による制限はある)
5. 商品は棚に半永久的に陳列され、登録商品の数には制限がない。
6. 商品はアイデア次第でいくらでも作成可能。
7. 一度陳列した商品についてのメンテナンスは一切不要で手間要らず。
8. 各商品の売価は枠内で自由に設定(例:0.99~200ドル)ができ、売れたら売価に対して一定の(例えば35%)の収益があがる。
9. 商品はアイデア次第では1時間で自分一人で作成可能。
10.販売はオンラインなので24/7で販売される。つまり寝ている間にもお金が入ってくる。
11.理論上では、上記1~10の条件を満たしつつ、年に億単位の売り上げを発生させることも可能!

普通に聞いたら嘘みたいな話だと思うだろう?筆者は大学卒業後に日本に帰国して以来過去6年以上製造業の仕事に携わっていたことがあり、いわゆるハードウェアを扱う物販に関してはそれぞれ業界では大手に属するような数社の企業で上流の企画から最下流の販売や再生業務まで幅広く手がけてきた経験がある。物販が良いとか悪いという議論をしたいわけではないが、正直言って製品のライフサイクルや値下げ、返品、競合との価格競争、在庫過不足などの問題でその都度頭を抱えてきた。そのような立場からすると上記のビジネスモデルは、まさに夢みたいな話である。が、上記はすべて本当の話で、これこそまさに電子出版(例はAmazonのオンライン電子書籍販売ストアKindleStore(キンドルストア))が実現させた世界です。勿論本当に売れるものを作るためには努力が必要であることは言うまでもないが、それはどのビジネスをするにでも同じことなので、どうせならいい条件のビジネスをしたいと思うのは誰しも同じであろう。特にあなたが作家や編集者など書いたり描いたりするクリエイター業界にいれば尚さらのことだと思う。

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。