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巷でよくある電子ブックリーダーの比較を見る際に注意していることが二つある。一つは比較をしている当の人物が本当にその比較の意味を理解しながらやっているのか、という点と、意図的にサイトへのアクセスや注目を浴びようとしていたずらに「あまり関係のない」比較をしてはいないかということ。英語には(You can’t)“compare Apples and Oranges”という表現がある。これはまったく異なる二つのモノを比較する際に用いる表現で、会話の中で自身の発言を擁護したり、他人の論点がずれている時に喚起するためにもよく使われる言い回しだ。電子ブックリーダーを比較する際にも、これによく注意しながら比較内容を吟味すべきである。

分かりやすい例を挙げると、「MP3プレイヤーVSiPod」というのがあった。これを言うと分かる人にはすぐピンとくるだろうが、結果的にはどうなったのかを説明すると、市場にはたくさんMP3プレイヤーというものがあり、SONYなども優秀なものを出していた。能力的にはiPodより優れていたプレイヤーもたくさんあったろう。しかし結果的にどうなったかというと、少なくとも世界レベルではiPodが一人勝ちである。というか、日本ではかろうじてソニー製品が活躍している光景が見受けられなくもないが、もはや世界の市場の表舞台にはMP3プレイヤーなるものの商品カテゴリがなくなってしまったのではないかと思えるくらいに市場が小さくなってしまっており目立たない存在になった。

一方iPodはAppleのiTunes戦略が見事功を奏し、今では世界一の音楽配信サービスとなった。タワーレコードが倒産した件などはまだまだ記憶に新しいが、それくらいのインパクトをもたらしたのである。ではこれらの比較は何が間違っていたのか。それはハードのスペック比較に捉われるあまりに、本質的な「違い」を見出すのに失敗したからだ。Apple創業者のスティーブ・ジョブスは自分たちのことを「ソフトメーカー」だと言い続けていた時期があった。(今でもYouTubeなどでマイクロソフト社の創業者でジョブスの宿敵でもあったビル・ゲイツとの対談がアップされており、そこでも名言されている)

ここが明暗を分けたのである。ハードメーカーはハードのことにとかく注目しすぎるあまりに、ハードを壮大なプラットフォームの一部としてしか捉えていないAppleの戦略を十分に理解できなかった。あるいは十分に理解していたとしても対抗策を打ち出すだけのヴィジョンをもてなかった。これと全く同じことが現在電子ブックリーダーの端末比較でも行われている。結果として市場には雨後の竹の子のように電子ブックが溢れる状態となった。下記は現在確認できる主だった電子ブックリーダーのリストである。(紙面の関係と趣旨の都合により、ここでは詳細な比較はしないが、筆者はブログ上と運営している日本初の電子出版SNS“eBook2.0”上でこれらのリーダーについてのレビューや画像などを取り上げているので、詳しくはそちらをご覧頂ければと思う。

(電子ブックリーダー一覧割愛)

では、結論だけ言うとこれらの中で注目に値するリーダーは何かというと現時点ではやはりKindleとiPadの二つしかない。何故か、この二つの製品だけは製品単体の仕様や機能ということを通り超えて大きなヴィジョンの中で産み出された製品だからだ。(本来はソニーのお家芸だったはずなのだが)特に日本人にとっては、これらの中で現在日本語のコンテンツをまともに読めるものはかろうじてiPadが半分くらいという状態なので、外国からの電子ブックリーダーを調べるよりも日本語対応の電子ブックリーダーをメーカーが作りやすいような環境になるようにミクロ的なメディア圧力をかけ続けるべきだと思う。具体的な候補といえばソニーとシャープである。そして、ダークホースが電子辞書を販売しているカシオとセイコーだと思う。その理由は前述のようにすでに電子辞書という電子ブックリーダーをすでに発売し続けている実績があるからであり、他が苦しむ日本語入力の問題を簡単にクリアしているからだ。(もちろんIMEを使えないので、そうなると大手で残っている入力規格はジャストシステムのATOKしかない)しかしチャンスは誰にでもあると思う。要は創業者マインドをもった経営者がそこに目をつけてリスクを負えるかだ。何度もいうがこれから先は世界に市場視野を広げるべきである。

日本にはマンガというコンテンツや海外でとても人気のある日本人女性といういわば高級「ブランド」も抱えている。そのせいもあって日本語を学びたいという外国人はとても多いわけであり、もちろん英語に対応するなんて造作もないことだ。この点では日本語は英語に対して(フォントという観点では少なくとも)上位互換だということをもう一度思い出してほしい。平仮名、カタカナ、漢字、アルファベット、アラビア数字という5つの異なる文字群から構成される日本語を一体どこの外国企業が真剣に手がけようとするというのか。国内メーカーではCESで筆者に「日本市場への非対応」を名言したソニー以外にもシャープが参入を表明しているが、一向に進む気配はない。これらの問題の背景にはソニーが言ったようなフォントに対する問題か、あるいは国内出版社との連携の問題があると思うが。

この状態こそが、本章で書いた「バカの壁」にはまっている状態なのである。ソリューションは単純なので、このまま本書の第5章まで読み進んで頂きたい。要は自分たちで骨を折って新しい市場とコンセプトを創出していけばいいだけのことだ。単なる猿真似や二番煎じで先に立てるような甘い世の中ではとっくになくなっていることを知るべきだ。あまりに保守的な動きをこのまま続けると大手の出版社も(日本国内での)抜群の知名度を誇る作品や作家を抱えたまま心中してしまうことになりかねない。その間に出版市場をとりまく環境やトレンドが変わってしまう可能性も十分にありえるのだから。ソーシャルメディアが台頭するような時代では世界中からの情報の流入を食い止める術はなく、どこかに「良いもの」が現れれば誰しもそれを欲しがるのは仕方のないことだ。コンテンツが王様だという言葉の裏側には読者が一番偉いという構図があり、その読者(ユーザー)は決していつまでも待ち続けてはくれない、この大原則を肝に銘じておくべきだろう。(続く)

電子ブック開国論 19 20 21

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