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日本語の電子書籍が本格的に普及し始めた時に、日本のみならず日本書籍が入手できる世界中で起こりそうなことが一つある。新書の販売数の低下である。先ほど私が新書ならば内容によっては1時間以内で一冊読み終えてしまうという話をしたが、これはその後の読後感もその程度ということが多い。具体的な名前を挙げる必要はないと思うが、日本で大ベストセラーだというから興味本位で読んでみたはいいものの、下手をするとタイトルと内容がほとんど一致していないということに気づいたりすることもある。

よく文字数の限られた大手ポータルサイトや大手SNSのニュース欄なんかで、大げさな見出しで注目を集めてクリックを誘う手合いが多いが、あれとまったく同じではないか。日本は空前の新書ブームらしく、筆者も日本滞在中に書店を訪れるたびに目にする夥しい数の新書棚の前で物色をすることが少なくない。しかし、中には文字数も少なく中身がないものも多く、こんな本に700 円を払うなんて!とがっかりを通り越して怒りそうになることもある。

タイトルを見ても、二匹目のドジョウとばかりに似たようなタイトルが並ぶのも考えものだ。(もちろんこんな私が言うまでもなく関係者の方々も現状にお気づきだとは思うが)先日購入した筒井康隆氏の「アホの壁」(このタイトル自体がもちろん著者も書いている通りに養老教授のベストセラー「バカの壁」にあやかる形で上梓されており、ちなみに筒井氏がこの話題に前書きで触れた理由はもともとの執筆依頼が「人間の品格」だったからだそうで、ちなみにこの「人間の品格」という作品も別の作家によって出版されているから笑うに笑えない現状だ)にもあったが、私の愛読書である「祖国とは国語」の著者である藤原正彦教授のベストセラー「国家の品格」にあやかった「~の品格」というタイトルの著作がすごい数世に送り出されたらしい(20以上はリストアップされていたと思うので思わず吹き出しそうになった)が、「国家」より売れたのは「女性の品格」ただ一冊だけだったとか。

その少し前は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」に影響された「なぜ~のか?」シリーズもあったし、人気TVアニメを題材にした「磯野家の謎」がヒットした直後には「~の謎」シリーズがそれこそ雨後のタケノコのように出ていたのを覚えている。(もちろん全部中身次第なので、それをそのまま否定するつもりはないことを理っておく)実際にはタイトルにつられて購入したはいいが、読んだ後にあまりの中身の薄さに激怒するような読者も多くいるかも知れず、アメリカの返品文化に慣れつつある筆者などはこれ自体は本来なら「品質保証」外の返品に該当するような例ではないかと感じてしまう。

アマゾンのKindleではないが、もしも電子出版に返品というシステムが採用されたら、例えその期間がアマゾンが採用しているような一週間は長いとして例え三日でも、場合によったら一日でも返品ラッシュが起きるような製品がでるのかも知れない。その点でフリーミアム戦略や「立ち読み」機能などが充実してくるかも知れない。いずれにせよタイトルや広告戦略の影響でもしも本来の需要よりも売り上げが「水増し」されてきたような事実があるとしたら新書に限らず電子出版で壊滅的なダメージを受ける可能性もあるかも知れないし、百歩譲って返品ルールが(幸いにも)設けられなくても紙版に比べて電子版が易いという状況になれば電子版を選択する消費者が拡大することは十分に考えられる。

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