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「いいのか?話してもいいよ、別に」それに気づいたレイジは声をかけたが、
「いや、仕事の電話だから後でやるさ。それより本題に移ろうか」と武内は言った。今日のうちに学んでおかないといけないことがあるらしく、それがそもそも呼び出された理由だった。

ウィキペディアの五大原則
「じゃー簡単にウィキペディアについて説明する。と、言っても読む方は知ってるだろうから、執筆する方についてのみだ」レイジは準備していたメモをコンピュータ上で開きながら話し始めた。
「一般の人は閲覧するだけだからほとんど知らないと思うが、ウィキペディアにはかなり厳密な運用ルールがある。そして、それらを束ねているのがウィキでいうところの憲法とも呼ぶべき五大原則だ」

「五大原則ね」武内はそういいながら手元のメモ帳でメモを取り始めた。
「そう、これは五本の柱と呼ばれており、ウィキペディアが創設されて以来ずっと変わっていない。どの言語のウィキをとっても同じことだ。説明しよう」そう言いながらレイジは手元のメモに大きな字で1から5まで書き綴った。

「まず第一の原則。それはウィキペディアは百科事典だというものだ」とレイジは言った。
「なるほど」武内の耳にはごく当然のように聞こえた。それは誰もが知っているウィキペディアの姿であった、少なくとも武内はそう思っていたに違いない。
 しかし、この最初の原則からしてウィキペディアの現状と既に矛盾してきている。と心の中でレイジはつぶやいていた。数十の言語に翻訳されて、毎日数百万というページビューを誇るこのウィキペディアという史上稀に見る活気な存在は、もはや百科事典などという旧世紀以前の過去の遺物とはすでに一線を画してしまっている。ウィキペディアはウィキペディアであって、それ以上でもそれ以下でもない、というのがレイジの持論だった。
「実際にはもうこの原則はウィキには当てはまらないと僕は思ってる。だけど、ややこしいからまた後でゆっくり説明することにしよう。とにかくこの原則が最初のルールだ、そしていわゆる「特筆性」のルールとこのウィキペディアは百科事典だという鉄則にはその内何度も出くわすことになるからよく覚えておいてくれ」

「なるほど」と言ってはみたものの武内はまだ釈然としないようだった。
 そんな武内を尻目に、レイジはさっさと説明を続ける。大学で一緒に学んでから、かれこれ十数年の仲であり、この人柄は素晴らしいが、何とも要領の悪い男の良い部分と悪い部分については他の誰よりも理解しているつもりだった。お互い郷里を離れて長いので、もしかすると安彦の家族よりも自分のほうが彼という男についてよく理解しているのではないかと思えるほどだった。ふと視線を落とした腕時計は午後1時を刻もうとしていた。

ウィキペディアンの憂鬱 8 9 10 へ

(*出版時期が具体的になりつつあり、本格的執筆を開始したため、一部名称などが変更になっております。追ってブログのエントリーも修正して参ります。読みにくいかと思いますが、しばらくご辛抱ください)

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