近未来のソーシャルニュースネットワークを考える(2)

(1からの続き)
では、これからもこのように時代を先取りして、多くの顧客、あるいは会員を確保して「囲い込み」に成功するサービスがネットの世界を牽引して、儲けていくのだろうか。恐らく大多数の人が「YES」と答えるかと思う。筆者も少なくともあとしばらくはこの流れが一気に変わるような展開がないと考える。ネット市場では勝者は「一分野に一者のみ」、この原則が急に大きく覆ることはなさそうだ。

しかしながら、時代の変遷をもろに受けるのもネットの世界独特である。例えば動画共有サイトのVEOHが経営破たんしたそうだが、これは一時期米国のネットを大いに賑わせたサービスである。Joostもよくないらしい。が、筆者の友人が日本の立ち上げを手伝っているHULUに関しては米国ではほぼ一人勝ち(YouTubeを除けばだが)の様相を呈しているようだ。日本ではなかなか権利の問題が難しいそうだが、どこかの業界で聞いた話である。

筆者が以前いた製造業の業界は一度シェアを取ると、しばらく続く傾向にあると思う。メーカーは認知されていくことで競争力を強めていくし、熱心な顧客がついてくる。しかしネット世界の住人は気まぐれである。栄枯盛衰がこれほどまでに激しい業界も珍しいのではないか。(もっともGoogleやEbay、AmazonといったIT巨人のように頭一つ抜けてしまえばしばらくその覇権は続くことになるのだが)

少し話が長くなってきたが、いよいよ本題に入る。筆者は現在とあるプロジェクトを構築中である。これは、ずばりと言ってしまえば「世界で最も速く成長するソーシャルニュースネットワークの構築」プロジェクトである。とある週末の日に、思い立ったアイデアがあまりに面白かったので、そのまま脳内処理を続けた結果、周囲の仲間にシェアしたくてたまらないものになってしまった。ソーシャルニュースネットワークとは何か?米国ではDIGGがソーシャルニュースで有名なサイトだし、日本にはニューシングという似たようなサービスがある。(アクセス数や規模はかなり違うと思うが)

しかし筆者の中にあるソーシャルニュースネットワークといえば、一時ネットを騒がせたあの動画にでてくる架空の会社「Googlezon」が運営するあれである。(下記がその動画、日本語字幕つき)恐らくご覧になられた方も多いだろう。


EPIC2014

このアイデアに基づいたネチズン主導のメディアサイトはいつかできると思う。Yahoo!やMSNといった大手ポータルサイトではこれらの動きに十分対応しきれないし、十分な広告収益を得ている彼らのすることはもっと別にあるのかも知れない。なので、これまで広告主を最大に集めてきたポータルが取って喰われる日が近づいているのかも知れない。

ここで大事なのはいかに

1) 多くの会員を集め、アクセスを維持するか
2) 利益を会員に還元することができるか

であるかと思う。そしてソリューションは筆者が考える限り、「高品質のニュース」を「最速」で届ける、これに尽きる。これさえ出来ていればニュースに関心のあるビジターは常にそこに戻るだろう。そしてそこにはこれまでのニュースポータルではなかったような、フィードバックを情報発信者に返せるような環境が必要なのかも知れない。また実名とはいかないまでも、投稿者が誰であるかは認識できる必要があるように思う。

ここまで考えて、一通り頭の中で形ができてきた筆者なりのアイデアに類似したサービスがないかと検索をしてみた結果、かなり面白いサイトを見つけた。それはMAYOMOというサービスだ。これは以前「ヒスティ」を立ち上げた時から考えていた筆者の構想の一つに非常に近い。地図と時間軸を用いたインターフェースである。運営元がよく分からないが、ドイツにあるのは著作権の問題を回避する意味合いもあるのだろうか。

画期的なソーシャルニュースネットワークサイト MAYOMO
画期的なソーシャルニュースネットワークサイト MAYOMO

また収益性の観点からも、認められた記者は自身のチャンネルをもつことで収益を上げることができるというから、ここもよく考えられている。またどこかで起こった特定の事象について情報をリクエストすることもできる。誰が手伝っているのかは分からないが、日本語のローカライズも一応できている。(修正の余地は大いにあると思うが)このサイトを見て刺激を強く受けたので、俄然やる気がでてきた。ネットで調べてみてもまだあまり知られていないようだし、雰囲気がかなり保守的なのでマス受けするのは難しいかも知れない。自分で考えたレイアウトがそのままに実現されているものの、よくみるとあまり使い勝手がよくないことに気づいた(笑)

話を戻して、筆者の結論としてはもしもMSNやYahoo!といった大手ポータルサイトを脅かす規模の次世代型ソーシャルニュースネットワークができるとすれば、それはいくつかのポイントに沿ったものになるだろうということ。それらは例えば下記のようなものである。

1) 英語を中心とした多言語対応 (中国は検閲の問題があるので、最初から行くのはまだ時期尚早かも知れない)で世界をカバー
2) 会員全てとはいかなくても、貢献者がサイト全体の利益の一部の還元を受けること →ユーザー作成コンテンツの充実
3) 短期間で急成長することで話題になること →時間がかかるとその間のコストをベアできずに潰れてしまう。
4) 非営利団体からの支援を受けること →アメリカのトレンド。広告主やオーナーによるバイアスを軽減するため?
5) 記事を書くのは一般ユーザーではなく、それなりの能力がある者になり、非匿名で投稿する。
6) 閲覧者がそれぞれの記事にコメントすることで盛り上がることができる
7) 電子出版にもつながるようなコンテンツ → 例えばiPadで見れるような体裁をもつなど
8) 極力コストがかからないスタートアップ、ギラギラしないEXIT戦略。→売上は少なくとも固定費が少ないので頭割りだと多くなる。(電子出版も同様)
9) これまでとは違ったユニークなカテゴリ編成
10) 動画や静止画を最大限に活用したプレゼンス

コストを極力抑えながらの始動が今の時代のITプロジェクトにはあっている。立ち上げに大手VCから億単位で調達しなければ成立しないプロジェクトなど、もはや成り立ちはしない。この点で筆者は日本では今ほとんど注目されていないNINGに注目している。(ちなみにLMDPでも独自の電子出版に関連したSNSを立ち上げる予定であるし、それ以外のプロジェクトにも活用しており、すでに4つほど立ち上がった)

うまく記事をかける仲間が見つかれば3月から試しに筆者也のアイデアを具現化してみたいと考えている。日本人のライターも募集するかと思うので我こそはという方はご連絡頂きたい。(プロジェクトが開始されればこちらのブログでも告知する予定)

<関連リンク>
近未来のソーシャルニュースネットワークを考える(1)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。