チリの地震とアメリカのエイズ(HIV)事情

ハイチ地震の衝撃の余波が覚めやらぬ中、今度はチリを襲った大地震。Huffington Postが伝えているが、震央(Epic Center)での衝撃はチリのほうがハイチのそれ*よりも501倍強いという。しかし、震央が深く、都心のサンチアゴから300km以上離れていたということもあり、人的被害はハイチほどには至らなかった。災害なので、もちろんどちらがいいという問題ではなく、単に人的被害が少なくてよかったということである。しかし倒壊した町並みの画像を見るとこちらもかなりすさまじい。

倒壊するチリの町並み
倒壊するチリの町並み

ちなみにマグニチュードというのは震度とは全く異なる指数であり、数字が1増えると30倍以上、2増えると1000倍の強さである。大学時代に地理を専攻した際に地学もかじったので、大きなマグニチュードを聞くと未だにぞっとするのはこの違いを知っているせいだ。(一方震度は体感によるものが目安である)ウィキによると、今回のチリ地震よりも大きな地震というのは過去にも数回しか発生しておらず、何と過去最大(M9.5!)のものもチリ(1960年)だったようだ。

双方の地震で被害に遭われた方に対して慎んでお悔やみを申し上げたい。本来ならばこういう時にこそネット上で支援的に機能するのが自分で立ち上げたNPOのチャリティグローブ(Charity Globe)なのだが、リソース不足で現在筆者自身の手作業でNINGベースのシステムにリニューアルの真っ最中であり、これらの地震に対する関連するニュースを取り上げたり、復興支援する人々の動画をアップすることくらいしかできず自身の非力を嘆くばかりである。(こういう有事に備え、我こそはという方がいれば、ぜひともご支援頂きたい)

*何せハイチ地震の死者は22万人以上と言われており、これだけでもすごいが、この西半球で最も貧しいという国の人口は約1000万人である。つまり、国民の45人に1人が命を失った訳で、これは例えば(古い数の例えかも知れないが)クラスに一人が死んだみたいなものだ。日本の人口を1億2千万人としたら、267万人が死んだのと同じことになる。(諸説あるが、これは第二次世界大戦とかの死者数に匹敵するような数字である。もちろん当時の日本は人口も少なかったが。現在でいうと日本で12番目の広島県の人口に近い)これはすごい。

また、ちょっと別の分野だが興味深い記事がNEWS WEEKに掲載されていたのでピック。リベラルな方たちには少し耳の痛い話かも知れないが、最近影を潜めていたエイズに関する記事である。

HIV Still Plagues the U.S.: Some Areas Have Higher Rates Than Africa (アメリカに依然蔓延するHIV:一部の地域ではアフリカよりも高い感染率)

More than 1 in 30 adults in Washington, D.C., are HIV-infected—a prevalence higher than that reported in Ethiopia, Nigeria, or Rwanda. Certain U.S. subpopulations are particularly hard hit. In New York City, 1 in 40 blacks, 1 in 10 men who have sex with men, and 1 in 8 injection-drug users are HIV-infected, as are 1 in 16 black men in Washington, D.C. In several U.S. urban areas, the HIV prevalence among men who have sex with men is as high as 30%—as compared with a general-population prevalence of 7.8% in Kenya and 16.9% in South Africa.

ワシントンDCにいる成人の30人に1人はHIVに感染しており、この割合はエチオピアやナイジェリア、ルワンダといったアフリカの地域よりも高い。またこの感染率には人種、同性愛、ドラッグ中毒などが強く影響しているとされる。特定の都市部では男性の同性愛者の感染率は30%にも達し、これはケニア(7.8%)や南ア(16.9%)の全体よりも高いという。(なんだか同性愛者をかなり暗に攻撃しているような論拠だが、筆者のエチオピア滞在の感想からするとアフリカでの同性愛は先進国より遥かに低そうなので、比較するとなると一般的な数字にするしかないかも知れない) しかし、30%とは空恐ろしい数字である。この記事はもう少し進んで、感染率は所得や住居の安定性とは反比例の関係にあり、結果として特定の人種や所得層の人々の「比較的クローズドな」性的ネットワークを通じてエイズが蔓延している可能性があると指摘している。ヒスパニックや黒人はこの点で(相手に対する依存度の高さから抗し難く)性的にも不安定なので、結果感染率が高いという分析(ヒスパニック系と黒人でアメリカの新規感染者の25%を占めるそうな)である。アメリカには100万人の潜在キャリアがいるそうな。やはり安定した結婚生活は非常に重要である、ということか(笑)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。