D29 EBook2.0 Forumの講演会 ~無償コンテンツとソーシャルメディアを使ったE-Bookマーケティング~

パネルディスカッションの様子

日本の長期滞在ももうすぐ30日というこの日、
E-Book 2.0研究講座 (第8回)のゲスト・スピーカー&パネリストとして参加してきた。
会場は青山一丁目駅程近くの会議室コネクト北青山EAST。台風で開催前はすごい雨だったが、それにも関わらずお越し頂けた参加者の皆様に感謝。

講演内容 (スピーカー)
「コミュニティメディアから世界へ-雑誌ビジネスモデルの再構築に向けて-」
・雑誌の資産/機能の継承をめざすビジネスモデル
・無償コンテンツとソーシャルメディア (小笠原 治 MEDIVERSE 代表理事)
アメリカの出版メディアの歴史についても言及する小笠原氏
まずは「デジタルリーディング」の習慣化を、というメッセージが印象的だった。

「欧米で拡大する無償コンテンツと関連ビジネス」
・拡大する無償コンテンツの実態
・無償コンテンツとソーシャルネットワーキング (鎌田 博樹 EBook2.0 Forum編集長)
無償コンテンツの例と意義について説明する鎌田氏

パネル討論「出版マーケティングとして見た無償コンテンツとソーシャルメディア」
・Web時代の雑誌生き残りへの課題
・無償コンテンツは雑誌を活性化できるか?
・ソーシャルネットワーキングから雑誌のビジネスモデルは生まれるか (立入 勝義 『ソーシャルメディア革命』『電子出版の未来図』著者)
出版をソーシャル化する

パネルディスカッションの様子

小笠原 治(MEDIVERSE 代表理事) モデレーター:鎌田 博樹

パネルディスカッションの前に、15分ほどで簡単なプレゼンをさせて頂いた。内容は「電子出版を社会化する」。
実はその前に行われた小笠原氏のプレゼンの内容が素晴らしく、ソーシャルメディアとアメリカの実情、出版と電子出版市場の趨勢などが見事にまとまっていたので、内容を若干変更して、ウィキペディアの説明に時間を費やした。というのも、ソーシャルメディアと電子出版という観点では、ウィキペディアが世界で最も進んだ媒体であり、それを学ぶことで見えてくる課題や可能性などがたくさんあるからだ。もちろん収益構造という観点ではウィキペディアは広告収益がなく、寄付のみに依存しているのだが、編集方針、フォーマット、ソーシャル化、持続可能な発展に向けて、など多くの課題を共有して、日本だけでなく世界のウィキペディア(あるいはウィキメディア)コミュニティで10年を超える建設的な議論と編纂活動がなされている。まさにウィキペディアを学べば、ソーシャルメディアと電子出版の未来が見えてくるのである。(筆者の講演についてのコメントを小笠原氏がブログで掲載されているのでよろしければそちらもご一読頂きたい)

ちなみに、日本の電子出版市場はいよいよ来年くらいからは本格化するのではないかという気がしている。やはりカギはキラーコンテンツ。私が学生の頃本多勝一氏らの手で「週刊金曜日」が創刊されて話題になったが、あれくらい話題になる電子雑誌がまずでてくるかどうかというのが日本では分水嶺になりそうな気がしている。というのも、日本でのタブレットの普及は目を見張るほどであり、WiMaxの利便性と共に、スマホ&タブレットのユビキタス環境が実現しつつあるのが見えるからだ。

私は常々日本のWiFiホットスポットの不便なのがネット社会の弊害だと思っていたが、WiMaxを含めた「どこでもWiFi系」のサービスが充実してきているのを見るにつけ、逆にアメリカよりも大きなポテンシャルがあるような気がしてきた。(もちろん国土面積の違いが大きい) 購読性で成り立つビビッドな電子雑誌は果たして二年以内に出てくるのか、そこに注目していきたい。そして、できたらそのコンテンツは世界にも通用するものであって欲しいなぁ。

電子出版→ソーシャルメディア→ネット選挙 の波がじわじわ近付いているのを感じる。何度も言うが、検証すべきカギはウィキペディアである。

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。