Ning がついに身売り グラムメディアに買収される

ある意味ソーシャルメディアの世界で独特な位置を築き続けてきたNingであるが、ついに買収されてしまった。買ったのは全米ナンバー1とも言われる女性系広告メディアのグラムメディア。買収金額は1億5千万ドルと言われている。(日本円では120億円くらい)Huffington Post、Tech Crunchに続き、またトラディショナルメディアによるソーシャルメディア企業の買収である。

グラムメディアジャパン公式HP

グラムメディアは2006年に米国で設立され、米国で5,200万人、世界中で7,500万人のユニークユーザーが訪れる全米No.1の女性向け広告メディア。

自社で運営する「Glam」という女性サイトをハブに、高いクオリティのブランドサイトを束ねる垂直統合型広告ネットワーク会社の先駆け。グラムメディアが提供するネット広告サービスは、従来のパフォーマンス重視と異なり、ネットサイトのブランド力へのリーチを基に高い単価の広告出稿を取り扱うことから、ネットでのブランド広告推進役として注目されている。

日本でもグラムメディア・ジャパンを設立し、2008年11月からサービス開始している。(はてな)

Tech Crunchの報道 

誰でも簡単にSNSを作成できるNing(ニング)については、私自身かなり熱を入れて応援してきた。(サブカテゴリーが存在するほど)
しかし、昨年行った有料化の波は多くのユーザーを離れさせ、未だに多言語対応の部分で不安がある(日本語版なのに中国語の漢字が表記されるなど)ことや、News Share のような便利なアプリが無くなったことなど、彼らが狙う方向通りには進んでないことは明らかだった。

実はそれでも、いまだにあれほど簡単に課金制のプライベートなSNSを構築できるプラットフォームは存在していない。モバイル版も充実してるし、ホスティング容量にも制限はない、30以上の言語にも対応している。なのにも関わらず、もはや熱心な信奉者の私自身でも関心を遠ざけてしまいつつあるのは、有料プランの金額があまりにも高いからだ。(つい先日も値上げが発表されたばかりである)

下記が料金プラン
Ning Pricing

今やどこのホスティング企業も月々数百円でしのぎを削っているレンタルサーバー業界、月々25ドルはあまりにも高すぎる。(Miniは実際にはほとんど利用することができない)私もいくつかもっていたが、毎月の費用負担が大きくなってきたので現在どんどん数を減らしていて、まとめているところだ。それでも、Ning の可能性には大きなものを感じているので、自身の公式サイトもNingで運営しているし、これを変えるつもりはない。

しかし、惜しむらくは日本のIT企業である。なぜNingを買収できなかったのか?一時期4000万人とも言われる会員数を抱えていたNing、その数は一気に減少したとはいえ、いまは有料会員率100%(試用期間中のユーザーを除き)なのである。Ning は「オープンでフリー」なことが売りのソーシャルメディア界において、将来性を見越した有料制への移行を断行した稀有な企業だった。その結果、Ning は他の多くのソーシャルプラットフォームから「村八分」にされてしまった。また、パートナーを大事にしなかった。私も何度かNing とパートナーシップの件でやり取りを試みたが、話は一向に先に進まない。しかし、こんなことは誰かがテコ入れすれば済む話だ。日本語や韓国語、中国語などの東アジア言語のプラットフォームはむしろ日本企業にとっては簡単に対応できることなのだから、英語圏やスペイン語圏でのユーザー数の多さを高く評価するべきだったのだ。

シリコンバレーにいると目先の技術や、膨大すぎる新規企業、そして多くの利権を取り巻くハイエナ的環境に左右され、逆にまともな情報が入ってこず判断ができなくなるということが時々指摘されるが、私はこの意見に賛成だ。弁護士などのフィーも法外で、それに踊らされる場合もあろう。むしろソーシャルメディアでいうと、技術的には低くても、映画や音楽など総合的にエンターテインメントを理解できるロサンゼルスのほうが向いていると感じる。LAからサンディエゴ、SF、シリコンバレーをカバーするので十分だ。LAにもスタートアップ系の企業やイベントは多く存在するし、シリコンバレーほど目立たないから買収交渉も簡単である。フィーも安い。敢えてレッドオーシャンの「死海」に飛び込むだけが手ではないのだ。この辺りは、これまで10年以上日系企業の北米進出を見てきているが、業界を問わず、同じ過ちが繰り返される一方である。何とも歯がゆいことだが。

「人の行く裏に道あり、花の山」という格言を日系の企業にもかみしめて頂きたいところだ。

<参考記事>
米国で最もイノベイティブなメディアと呼ばれるグラムメディアに学べること
ネットの革新を殺すProtect IP法案と先鋭化するハリウッドVSシリコンバレー
シリコンバレーのベンチャーの弁護士費用 by [渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。