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前回からの続き)

実は今年6月から筆者は昼間ウォルト・ディズニーグループの某社で働いている。
勤務地は家から40km離れた、ディズニーランドのあるアナハイム市。これまではずっと家の近くにオフィスを構えていたので、人生初の本格的な自動車通勤をしている。(といっても、往復二時間弱なので東京の方々に比べると申しわけないが)通勤して一日働くと腹が空く。よって家にまっすぐ帰って夕食を食べたく なる。

残業も特にないので早く家に帰ると、小中学生の娘たちが起きている。ご飯を食べると子供たちと一緒に時間を過ごし、寝かしつける。ごくごく一般的な家庭生活だが、考えたらこういう生活はこれまでほとんどしたことがなかった。自分で事業をすると、とにかく時間に追われる。特 にフリーランスの状態では働かないと食いっぱぐれるし、働いた時間のすべてがお金に変わるとは必ずしも限らない。自分で非生産部門の 仕事、そして営業や販促活動もしないといけないからだ。

*平和な家庭のロールモデル!?

「ドラえもん」や「サザエさん」など、筆者が幼少期を過ごした頃に見ていた番組は今もやっていて人気があるわけだが、思い起こせばのび太の父「のび助」も「マスオさん」も、特につきあいもなくほぼ毎日まっすぐ家に帰ってくる。登場人物を絞っているからだろうが、特にのび助なんて40近 いのに親戚以外の知人と会っているそぶりすらない。(普通に考えたら引きこもりと言われてもおかしくないレベルだ)しかし、一軒家に住んで妻と子供を養っている。そして妻は両方とも専業主婦である。サザエさんはドラえもんよりもだいぶ前に始まっていて、作者の年代を反映させてか二世帯三世代同居。よく考えると両方とも東京だが、これが今の東京の一般的な家族 の暮らしを体現しているとは到底思えない。

と前置きはここまでにして、前回は、ベビーブームを殺した犯人候補として「首都東京」の名前を挙げて筆者なりの検証を開始してみた。
今回はただの人口ではなく、性別、そして結婚という要素も含めて事実関係を掘り下げてみたい。(特殊)出生率に加えて、婚姻率と離婚率を追加してみるとさらに興味深い事実が浮かび上がってくる。

*東京と結婚・離婚・出産

東京は出生率は全国最下位だというのは指摘したが、人口に比して婚姻率はトップである。しかもその割には離婚率が低い。つまり子供のいない夫婦が数多く存在するということだ。
その正反対が北海道で、婚姻率に比べて離婚率が高い。秋田国際教養大学を前回引き合いに出したが、教育水準が高いことでも有名な秋田県は婚姻率、離婚率共に低く 、沖縄は婚姻率も離婚率も高い。

婚姻率全国1位で出生率全国最下位の首都東京の不思議(木走日記)というブログエントリーでこの辺りが掘り下げられている。

婚姻率と離婚率による4パターン

(出典:木走日記

婚姻率が高くて離婚率が高い沖縄と婚姻率が低くて離婚率も低い秋田は、どちらかというと普通で割合に比して離婚率の低い東京と高い北海道というのが特殊だと考えられる。

ちなみに婚姻率の推移は下記のようになっている。こちらはどんどん下がっていて、2010年時点でピークだった1947年の半分以下に落ち込んでいる。これは社会における結婚の意味合い、個人に対しての結婚の重要性が大きく変わったことを示唆する。理由はわからないが、したくてもできない。あるいは(まだ)したくない、という人が圧倒的に増えた。昔は逆にいうと、大人になったら結婚するのが当然という風潮だったのだろう。男性にも一定の年になれば所帯をもつのが、甲斐性の証明というようなプレッシャーがあったのかも知れない。身体的に女性のようなタイムリミットをもたない男性は、ともすれば先延ばしにしてしまうのでそういうピアプレッシャーでもないとなかなか決意できない。(とはいえ昔は終身雇用で、ある程度将来性に見通しがついたが、今はそうとも言えない。男性も厳しいところである)

 

婚姻率推移

 

平成24 年の平均初婚年齢は、夫30.8 歳、妻29.2 歳。都道府県別にみると、最も低いのは、夫が宮崎県の29.8歳、妻が福島県の28.1 歳であり、やはり東京が最も高く夫32.1 歳、妻30.3 歳である。初産年齢が30歳になっているのだから、東京では交際相手の女性の妊娠が結婚のきっかけになるできちゃった婚、または同棲が多いのではないかという仮説もなりたつかも。

ここで、生涯未婚率推移のデータも見てみよう。出生率と未婚率には重要な相関関係があるはずだ。

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(出典:平成24年版 子ども・子育て白書 内閣府)

ベビーブーマーが10代だった1960年には女子1.9%、男子1.3%だったのが、なんと2010年には男子20.1%、女子10.6%にまで引きあがっていることに注目。
(*しかしここで忘れてはいけないことは基準となる50歳時点で女性はもう大半が(実質)子どもを産めなくなっているが、男性にはそれが該当しないことだ)

かくして市場には男性が多くいても、結婚を望む男性は少ないという事実が女性を震え上がらせる。女性の晩婚化が進み、初産年齢も高くなる。昨年始めて30の大台に乗ったのが話題になったが、一昔前は30歳が高齢出産だったの基準だったというのは前述した通り。昔の基準だと今は平均が高齢出産となるが、35歳が40歳に変更されることはきっとないだろう。

では前回からここまでの少子化と東京との関連性についての発見を一度整理してみよう。

*第一次と第二次ベビーブーム共に東京の人口は増加している。
*しかし、第二次では東京の婚姻率は高く、離婚率も低いものの出生率は日本最下位である。
*生涯未婚率が著しく高くなっており、男性の5人に一人は生涯独身となる。(=経済力があり結婚を望む男性には女性が殺到する)

ここまでくると、本来きてもおかしくなかった第三次ベビーブームが殺された背景に東京が密接に関係しているという推論はある程度成り立ってくる。

しかし、東京に人が集まるのにはもちろんそれなりの理由がある。東京に住んでは子孫が増やせない、日本の人口は減っていく一方だと分かっていても、東京に人・モノ・金が集まる以上、日々の稼ぎ口を探すに最適な場所は東京だという結論に達する人は多くなる。

 

では、東京の何がいけないのだろうか?そして、そもそもなぜ東京で少子化が進むのか。

いくつか考えつくままに列挙してみたい。

*環境面(土地、家屋が狭い、子供を育てるに適していない)
*経済面(給与が低い、雇用が安定しない、生活費、育児コストやベビーシッターなどのコストが高すぎる)
*嗜好の問題(子供をもちたいと思わない)
*結婚を取り巻く現状の相違(結婚したくない、あるいはできないと思っている人が多い。子供が欲しくない人が増えた)
*労働面(仕事のストレス、通勤による時間と体力の疲弊、サービス残業)
*社会面(女性が専業を余儀なくされる)

これらの問題は独身に該当するもの、夫婦に該当するもの、そして両方に該当するものがありそうだ。
(実は結婚を取り巻く環境のところでは、もっと突っ込みたいことがある。それは仮面夫婦や婚外恋愛・不倫の増加などだが、これを含めた性の問題については後ほど別のアプローチで触れることとする)

*女性が求める理想の相手を受験に例えると。。。

ここで、一旦東京の容疑者から離れて次の容疑者を検分するために次のデータに目を向けてみたい。
それは女性が結婚相手に望む年収に関するデータである。

まず2010年の国勢調査によると、東京都に住む30代女性の未婚率は34.09%で全国トップ。適齢期である25~29歳の女性の実に約6割、そして男性では約7割が未婚であるという。
そして某調査によると、結婚相手に求める最低年収は500万円未満であるが、理想は600万円以上。別の調査では未婚女性の66%が希望する結果もあったという。ここから伺えるのは女性の本音は依然男性に経済的安定を求めるということ。しかし、現実は厳しく、都内にさえこれに該当する独身男性は3.7%しかいないそうだ。

年収ラボによると、サラリーマンの平均年収は平成24年度で408万円。(平成23年国税庁調査によると、男性サラリーマンの平均年収は、20代前半262万円、20代後半367万円、30代前半434万円、30代後半では498万円)過去17年で最高だったのが平成9年で467万円だから13%の下落。別の統計によるとこの600万円以上の年収を得ている男性の割合は人口全体の5.7%ほどだという。受験世代に懐かしい偏差値を用いると、上位7%が偏差値65だから、それ以上となる。67くらいとすると私立大学に換算すれば早慶上智クラス、相手は高嶺の花だ。

そこで否が応でも「自分の婚活偏差値」がいくらなのかを値踏みしつつ行動することとなる。(もちろん、客観的な婚活偏差値など算出しようがないが、重要条件として「ルックス」x「年齢」x「性格」が関係してくるだろうことは容易に想像がつく。性格は主観的なものだが、ルックスと年齢については、尺度がかなり一元的な日本においては、ある程度の数値化は可能かも知れない。この多様性の無さも実は筆者が考える犯人候補の一つである)

つまり団塊ジュニアの婚活女子は、受験で「戦争」、就職でバブル後の「氷河期」を体験した上に婚活でも「ライアーゲーム」ばりの過酷な「椅子争奪戦」を余儀なくされているわけである。男性の婚活上市場価値は経済的に安定し始める30代では下降というよりは上昇する反面、女性が日々年を取る中で焦りを高めるのは至極当然である。

ここで一つの問題点が浮かび上がってくる。団塊ジュニア以降の男性が女性に対してもつイメージは、団塊世代の母親の影響を受けていて依然保守的なイメージが根強いということ。最近のドラマで言えば、半澤直樹の妻、花みたいなもんだろうか。バリバリのキャリアウーマンなんて昔はごくごく少数派だったから、男性は慣れていない。

結果として女性がキャリア偏差値を高めればその分「婚活偏差値」が下がってしまうという究極の問題が生じてしまう。仕事も育児もバリバリこなすような女性がまだまだ日本に少ない最大の理由の一つはこの意識ギャップにあるのかも知れない。そして英語ができ、外資系勤務や海外出張などもバリバリこなせてしまうような女性はささっと外人の男性を見つけて海外にでてしまう。彼らはもともと国内での婚活市場には規格外なのでさほど影響を与えない、が、長期的には男性の意識を改革するという点で大きな損失となりうる。

男性に比べて、女性の結婚を取り巻く変化は急激であり、母親がロールモデル足り得ない状況になっているので自分で模索するしかない。男性が親の団塊世代を反面教師として仕事人間になり過ぎないように気をつけている間に、女性は新たな「サバイバル」するための方法を模索しなければならなかったのだ。専業主婦の母親は参考にならないし、マンガやテレビドラマにもほとんど答えはでてこない。受験だ、就活だ、新社会人だ、と忙しくしている間に婚期があっという間に過ぎてしまう。

その一方、厳しい現実であるが、男性側は少し事情が違った。結婚する準備が自身にできれば年下の女性を探してしまう男性が多いことにも道理がある。特に男性が子供を切望すればそうなる。相手に子供が産めなくなるまでにある程度の猶予期間があったほうがいいと考えてしまう人も多いはずだ。

こういう風に書くと、女性に「いつまでも夢を見ずに現実を見ろ」というようなことを言う人(通常男だが)がいる。
つまり、終身雇用が崩壊したにも関わらず相変わらず男性への依存を考えているから問題なのだというロジックだ。「甘えてないで共稼ぎで働けよ」、というわけである。
しかし、キャリアウーマンとして家庭と仕事を両立させている先輩女性がいうのはともかく、男性の観点からこれを簡単に口にするのは非常に危険である。何故ならそこには社会構造的な問題が多くあるからだ。今でこそ「イクメン」という言葉があるが、一般的には産休を取り子供を育てるのは女性の役割だ。私自身4人の子供がいるわけだが、子供が小さい頃、特に幼児の期間は父親が母親をサポートすることで母親の助けになることはあっても、授乳などの関係で母親がいなくて父親だけで育てるというのにはかなりの無理がある。

産休は多くの会社で認められてる権利ではあるが、日本の企業では半年が一般的だときく。(それでも戻れればましだが、大抵新しい職場を探すことになる)我が家でも生後半年の長女を一時期託児所に預けて妻が働きに出ていたことがあるが、結果として妻の稼ぎの大半がそちらに充てられ、かつか弱い乳児が託児所で諸々の健康問題を抱えることがある。長女の場合は耳鼻系が弱いのか、中耳炎を繰り返したのであまりにかわいそうで結局妻は専業に戻った。
「条件さえ整えば子供を産むし、条件さえ合えばもちろん復職する」という本音を大半の女性が口にするに違いない。
女性のほうが男性よりはるかに現実的である。そんなことは言わなくても女性同士で完全に共有されている。彼らからするとすっとぼけたこと言っているのは男性のほうなのだ。つまり「男性社会」では彼らを取り巻く社会環境が整備されていないどころか、認知すらされていないということだ。

一方アメリカではベビーシッターが多く、子育てや兼業主婦の支援になっている。というのは、アメリカの社会では未成年を単独で家に放置することが違法だからだ。
下手をすると警察に捕まって親権を取り上げられてしまう。カリフォルニアの場合、子供だけにする場合は少なくとも一人が16歳以上でなければならない。よって、プロのベビーシッターが多いし、友達同士で子供を預け合うということも頻繁に行われる。カリフォルニア州の最低賃金は8ドルだから、妻が働きに出ようと思えば最低でもそれだけは稼げないと意味がないということになる。10ドルだったとしても、ベビーシッターに普通にお金を払うと時給200円まで目減りする。それに税金がかかると考えると、働く気が萎えてしまうのも無理がない。あとは在宅でできる仕事を探すか、夫にサイドジョブを探してもらうようけしかけるか。

長く続いてきた終身雇用や、男性中心の社会の弊害があちこちで女性の参画や昇進を妨げている。派遣社員や契約社員などの非正規雇用が多いという事実も勿論重要だが、他にも問題はありそうだ。人口の半分以下、労働人口の大半を占める「サラリーマン・OL」を取り巻く環境に目を向けなければ本当の問題は見えてこない。

ということで、次は第二の容疑者である「企業体質」、つまり職場環境や法的支援など日本の労働者を取り巻く環境に目を向けてみたい。
ベビーブームを殺したのは実は、一向に体質を改めない、あるいは時代や社会の現実に即していない「会社」なのではないだろうか?

本当の黒幕は別だと踏んでいるのだが、そこに迫るためにコーポレート・ジャパンに疑惑の目を向けてみたい。

続く

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