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前回に引き続き、今度は2回にわけてインタビューの内容をお届けする。

グラミー受賞者のマーク・ジョンソンはTEDGlobal2009のスピーカーでもある。友人では神田ロムさんがTEDxTOKYO2010に出ているが、考えたらTEDスピーカーをインタビューするのは初めてだった。世界を変えるビジョンを唱えるTEDの輪が世界中に広がっているのも感じる。

(インタビュー M:マーク・ジョンソン W:筆者)
W: 自己紹介をお願いします。
M: はい。マーク・ジョンソンです。Playing for Change(P4C)というプロジェクトのプロデューサーです。
W: P4Cを始めた時期といきさつをお聞かせ願えますか?
M: P4Cのきっかけとなる出来事が起こったのは、今から10年以上前の1998年のことです。当時私はニューヨークのマンハッタンで音楽の録音をしていました。その時地下鉄の駅で白塗りの二人の僧侶(モンク)がパフォーマンスをしているのを目撃したんです。周りを見渡したら、みんな彼らに釘付けになっていて誰も電車に乗ろうとしなかったんです。普段ならお互いにぶつかりそうなくらいの勢いで往来する彼らなんですが、音楽が彼らを一つにしたんです。

それから電車に乗って仕事に向かいました。その時に気づいたんです。これまでに出会った最高の音楽はスタジオの中じゃなくて、スタジオに向かう途中のものだったということに。それから私はスタジオを人々に届けるために、世界中を旅しました。音楽の力で人々を一つにするために。こうしてP4Cは生まれ、スタンド・バイ・ミー(Stand By Me) やワン・ラブ (One Love) といった名曲が創りだされました。

<名前の由来>
W: スタンド・バイ・ミーの音楽ビデオクリップはものすごい数の視聴があるということで知られています(最高で4600万ビュー)
ところでP4Cという名前の由来は何だったんですか?
M: タイトルはストリートミュージシャンたちの音楽を録音している時に思いつきました。というのも、彼らは「小銭(change)」のために演奏しているわけでもあり、世界を変える(change)ために演奏しているわけでもあるからです。それがつまり私たちがしていることだということです。こうしてP4Cという名前が定着するようになりました

<偉大なるフォロワー>
W: 一つのムーブメント(運動)が巻き起こるためには、最初のフォロワーが必要になります。P4Cにおける最初のフォロワーたちというのはどういう方々でしたか?
M: はい。最初に我々の運動を支援してくれたのは、私たちのパートナーでもあるノーマン・リアー(Norman Lear)氏でした。彼は88歳で、米国史上最も偉大な人物の一人です。彼が私たちの「スタンド・バイ・ミー」のビデオをあるアメリカでも最も有名なジャーナリストのもとにもっていってくれたんです。彼の名前はビル・モイヤーズ(Bill Moyers)といいます。彼はPBSで自分の冠番組である「ビル・モイヤーズ・ジャーナル “Bill Moyers’ Journal”」をホストしていましたが、この番組はアメリカで長年に渡って、最も賞賛されたテレビプログラムの一つです。

ビル・モイヤーズは「スタンド・バイ・ミー」のビデオを見て、私を彼の番組に招待しました。そこで私は音楽の力で人々を感動させ、世界をより良い場所にするということについて語りました。オバマ大統領が当選する前のことです。彼はアメリカに住む全ての人々がこのビデオを見て、誰に投票しようとも世界の未来を今創っているという事実に感動してもらいたいと訴えました。
ショーの放映が終わった後で、彼とリアーは我々のビデオを彼らのウェブサイトに掲載しました。その時まさに私たちの人生が一変したのです。そのビデオを見た人々はウェブサイトからそれをコピーして、家族や友達にYouTubeやその他のソーシャルメディアサイト経由でバイラルに伝え始めました。

あっという間にビデオの視聴回数は数百から数千に、そして数百万回にまで数週間で到達しました。それが「世界を変えるために演奏する(P4C)」という運動となり、音楽の力を通じて(世界中の)ミュージシャンたちを一つにする運動となったのです。

W: 素晴らしいですね。それが起こったのはいつ頃のことですか?
M: ちょうど今から約2年前くらい、ちょうど2008年11月のことでした。その頃から、私たちP4Cのような草の根組織をソーシャルメディアが後押ししてくれるという現実を目の当たりにするようになったのです。
W: では、ちょうど10年の間草の根運動を続けられてきたということになりますね。
M: はい。世界中のミュージシャンのもとを回って、音楽をプロデュースするということを続けました。録音して録画して、ということの繰り返しです。有名なミュージシャンの方たちも参加してくれるようになりました。

<ソーシャルメディアのパワー>
W: ソーシャルメディアの力についての印象はどうでしたか?
M: 実に素晴らしいですね。実際私たちはそれに対応する準備がほとんどできていなかったと言っても過言ではありません。あれほど多くの人たちが私たちのビデオを見てくれるなんてのは予想外でしたし、何かを売り込もうにもモノがありませんでした。しかし、それが一つの新しい社会運動の始まりになったことは間違いありません。なにせそれまでは1日に10通くらいしか来ていなかったメールが毎日何千通も届くようになったんですから、そういう状態は何ヶ月も続きましたね。
立ち上げていたウェブサイトにも多くのアクセスが集まるようになりました。先月は190カ国を超える国からのアクセスがありました。ひとえにソーシャルメディアの力のおかげですね。ここまでの私たちの成功はソーシャルメディアに拠るところが本当に大きかったと思います。

W: しかし、それは予期せぬ結果だったということですよね?
M: はい。まった予期していなかったことです。しかし、まさに最高のタイミングでした。

W: ソーシャルマーケティングの大家であるブライアン・ソリスの言葉を借りると、バイラルマーケティングを狙ってしかけるなんてことは不可能なのだということになっています。つまり、P4Cのコンテンツがそれだけのポテンシャルを秘めていたから必然を招いたということです。
M: そうですね。ソーシャルメディアにおける私たちの運動の意義というものについてお話しますと、音楽レーベルやプロダクションなどの大企業に成功か失敗かのカギを握らせるのではなくて、直接人々に決めさせればいい、ということです。私たちはそれが一番正しいことだと実感しています。

W: 190カ国というのは本当にすごいですね!私が考えるに、P4Cの成功の影には二つの重要な要素があると思います。一つは世界をつなぐインターネットの力、そしてもう一つは音楽が言語を超える力をもっているということです。
M: まさにその通りです。その二つが私たちを成功へと導いた最大の要素だと思います。インターネットの力により、これまでアクセスするのが不可能だった物事や組織に対して人々はアクセスすることができるようになりました。

そして、音楽は全ての言語を超越するだけでなく、文化や宗教、政治に経済といった様々な「違い」を超えさせてくれます。それが一人の人間の心からもう一人の人間の心につながる最高の方法です。ネットを通じて流布したものはデジタルであり、バイラルに広がりましたが、結局は「人間」同士がつながったということです。ビデオを見た一人一人が抱いた感情的な反応というものが連鎖した、そういうことだと思います。ソーシャルメディアには、人間性というものが欠かせません。

<超有名ビデオが誕生した背景>
W: ところで、「スタンド・バイ・ミー」を最初の曲に選んだ理由というのは?
M: その理由というのは、ある日サンタモニカのサードストリート・プロムナードを歩いていた時にロジャー・リドリーの歌声を聞いたことによります。何という素晴らしい演奏かと思いましたし、それを世界にもっていけたらと考えるだけでワクワクしましたね。彼の声にはソウルが満ち溢れているのを感じました。
だから、音楽を通じて世界をつなぐというこのプロジェクトの最初の曲は彼の演奏をおいてないと思いました。

W: まさに、最高の選曲だったわけですね。
M: そうですね、最高の曲、最高の歌手、そして最適なエネルギーがそこにあったと言えるでしょう。

<USツアー>
W: 現在行われているUSツアーについてお聞かせ願えませんか?
M: もちろんです。P4Cの次の展開はビデオの中に出てきた世界中のミュージシャンたちを、一箇所にまとめて一緒に演奏させることでした。
例えば「スタンド・バイ・ミー」にはグランパ(ニューオーリンズ)、クレアレンス(アムステルダム、オランダ)なんかが演奏しています。私たちの夢は、彼らを一つにして、ステージの上でP4Cを具現化させた姿を人々に見せることでした。彼らが「音楽を通じて世界を一つにする」というビジョンを体感できるように。このようにしてP4Cバンドが誕生しました。
現在行われている全米ツアーは第二回目です。
今回は前にもまして、強力なチーム編成になりました。バンドメンバーの目的は世界をつなげること、まさに人々に感銘を与えるためにつくられたバンドです。そういうバンドが演奏する音楽はまさにパワフルな影響力をもつアートそのものです。

W: アリゾナ州でのイベントは特に大盛況だったとお伺いしました。
M: ええ。ミュージカル・インストルメント・ミュージアムで行われたんです。1000人以上の聴衆が集まりました。最近ではP4Cは世界中のいろんなところから、様々な支援を受けるようになってきています。何故かというと、それはきっとP4Cが人々を感動でつなげる、「糸」のような存在になることを目指しているからだと理解されつつあるからだと思います。

次回へ続く)

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