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電子出版市場においては、これまでの出版界とまったく違った勢力図が描かれる可能性が高い。それほどまでに出版界は今激震しており、多くの会社や人物が振るいにかけられているところだ。(出版社のリストラ事情に関してはたぬきちの「リストラなう」日記などのブログに詳しい)電子出版の波は周到に準備されてきたものであり、過去に何度か進化をしては市場に阻まれるという経緯を経てきているものであるから、太平洋を挟んだアメリカ大陸で起きた地震の余波が津波になって現れてきているように予測可能だったのにも関わらず、日本の出版界を見ていると、地震そのものに急に見舞われたような蜂の巣をつついたような大騒ぎ。上を下に、とはまさにこのことか。一方IT産業においても、Web2.0という実体がよくわからないBuzzWordが盛んにもてはやされた時代から、結局「ウェブは儲からない」という結論に達する企業も多くなっている。動画配信大手の一つで無料視聴をモデルを貫いてきたVeohが先日会社再生の手続きに入ったというニュースは記憶に新しく、一方のHULUという完全に権利問題をクリアーした動画サービスが拡大して一人勝ちの状態になりつつあるのを見ても、もはやウェブの世界でもやっぱり「Contents is King=コンテンツが王様」だったという原点回帰がみられるわけである。

ツイッターは今まさに日本でも多くのファンを魅了し始めているところであるが、この会社も実は立ち上げ当初は苦戦し続け、経営状態は思わしくなかった。そもそもツイッターもYouTubeらの新興IT企業の登場経緯と同じように基本的には収益構造を伴わない無料モデルであり、この4月になってようやく広告モデルという収益ベースのモデルを発表したばかりである。(ちなみに4月中旬の時点でツイッターの利用者は1億人を突破し、米Yahoo!の検索回数を上回ったというニュースが報じられた)このツイッターが盛り上がり始めた背景には、政治のキャンペーンなどもあるかも知れないが、要はこのような原点回帰の動きをツイッターがサポートするということに注目し始めた企業群(例えば日本でいうところの広告代理店のようなところではないか)が「リアルで」有名な人物たちをツイッターを用いてPRし始めたからだ。有名トークショーの名物ホストであるオプラ・ウィンフリーが100万人以上のフォロワーを集めたことでツイッターは一躍有名になった。ツイッターは一見Web2.0っぽい先進的なシステムなように見えて、実はフォロワーを増やすのに最も効果的なのは「知名度があること」、であるところがポイントだ。つまり、もともとファンを多く抱えている人物がツイッターのフォロワーランキングではどうしても優位に立ってしまう。(詳しくは後ほど紹介するツイッターのフォロワーランキングを参照して頂きたい)これはいうなれば当然の帰結であるが、とりもなおさずTVや新聞、雑誌などのオールドメディアとのタイアップが大きく功を奏するということだ。これまで流行ったオンラインサービスの大半はその新鮮さがネットで話題になったものが多く、ヒーローは新たに登場することが多かったのだが、ツイッターはうまく既存のメディアと「セレブリティ」と呼ばれる有名な人物を取り込むことで見事に復活を果たしたのだ。

話を戻そう。ツイッターで証明されたのは「コンテンツが王様」だということだ。ツイッターやブログは人間そのものが商品である。電子出版の場合も同様に、「中身」が勝負になることは目に見えている。前述のSEOも結局は検索エンジンに対抗する手法を吟味することではなく、中身を充実させることが最良の方策であるという帰結に達しているマーケティング会社は多い。(逆に言うとそれほどグーグルは手強い相手だと言えるということだ)そして、コンテンツを探し始めたウェブ企業の目に飛び込んできたのが、この電子出版の新しい波なのである。書籍の歴史は751年のタラス河畔の戦いの際に発明されたとされる製紙法まで遡ることができると思うが、大きく譲って15世紀半ばのグーテンベルグによる活版印刷術に触発された聖書の普及まで時期をずらしたとしても、その歴史は500年以上と長く、電子ゲームやコンピュータの歴史などとは比較にもならない。つまりそれだけのコンテンツを世界中にもっているということで、いわばこれらの「売れ筋」コンテンツを掘り起こすことが世界市場における大成功のヒントとなり得るのだ。

つい先日発売されたAtomic Antelope 社の“Alice for iPad”を意力ブログでも取り上げたが、これはルイス・キャロルの手による有名小説にインタラクティブな「遊び心」を加えたものであり、ちょうど同時期に公開される映画とのタイアップ効果を期待して作成されているに違いない。(内容はどちらかというと、子供向けのものだが、Eye Opener いわゆる目覚まし効果としてはてき面だったに違いない)日本はこの点でいうと、世界で最も古いといえる成熟したマンガ文化をもっており、膨大な数の蔵書とそれを支える漫画家や編集者というクリエイター、そして老若男女を問わない購買層がいる。ここに日本の勝機があると思うのは筆者だけではないだろうが、その具体策については後ほど詳しく説明することとする。

ではこれから既存の出版社にとって代わる、あるいは既存の出版社に追加される電子出版社の役割とはどういうものだろうか。これを分かりやすく説明したのが下記の図だ。(図割愛)

電子出版社の役割は大きく言うと下記の5つ。

1.著作者との権利交渉
2.作品をつくりあげる
3.作品を所定のフォーマットに落とし込む
4.作品を売り込む
5.収益を分配する

このうち、1と2はもちろんこれまでの人脈と交渉力、そして経験が十分に活かされる分野であるので問題はない。(もっとも電子化の権利交渉についてはほとんどゼロベースからスタートすべきであるので一部では難航するかも知れないが)問題は3と4である。所定のフォーマットに落とし込む作業をするからには電子出版のフォーマットに詳しくなければいけない。もちろんこれは人を雇えば済むことなのだが、現状電子出版といっても統一スタンダードがあるわけではなく、アマゾンとアップル以外にも数多くの電子出版チャンネルがあり、それを難しくさせるのが言語の問題である。(世界にある電子出版チャンネルのリストを巻末に添付)そして、売込みにも問題がある。なにせ今回は売る場所がこれまでのような一般書店ではなく、通すべき取次ぎもない。そして前述したように宣伝するべき場の比重もオンラインがどうしても強くなってしまう。(紙版がない電子オリジナルコンテンツの場合は推して知るべしだ)これまでの売り込み手法も通じなくなってしまうので、出版社は新しい道を模索するしかない。ここがふるい落としの一つのポイントになるのだが、それほど出版業界の人間はアナログ志向を貫いてきたようなのだ。秋葉自作系を含むPC業界とオンラインゲームの業界を経験してきた筆者からすると(大変失礼な話だが)驚くほどにITのリテラシーが低い人が多い。

ここで登場するのが新しい「ディストリビューター」あるいは「エージェント」という存在だ。立ち位置的には出版社とキンドルストアなどの販売プラットフォームの中間に位置する彼らの仕事は出版社からコンテンツを預かって、希望のプラットフォームへの配信をすることだ。これにより、デジタルな部分はディストリビューター、アナログな部分は出版社、という安易な線引きが可能になるので救われたと思う出版関係者も少なくないのかも知れない。もっとも適切な業者を選ぶという難しさがあるのだが、今回の場合はかなりのスピードと市場を見通す眼力が要求されるので、自社にそのような体制を構築するのはよほど先見の明のある経営者をトップに据えている出版社でなければ難しいだろう。この点で、会社の代表が「クール革命」のようなすばらしい本を上梓している角川書店などは有望かも知れないが、これまでに電子書店プラットフォームを有していながらろくろく向上させることもしなかった、というかできなかった某書店などはさっさと利益を割譲してよく状況を理解している人物に判断を委ねるべきだろう。

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Categories: C) 長編, 電子出版