第1章 日経産業新聞の取材記事 – 電子ブック開国論 (11)

2010/1/4 日経産業新聞に取材記事が掲載されました!(この内容は2010年1月5日のブログエントリーを転載したものです)

先日取材を受けた日本経済新聞の記者の方から、1月4日付けで日経産業新聞に私の取材記事が掲載されたという連絡があった。日経産業新聞は日経グループ紙の中でも個人的にはかなり好きな新聞であり、製造業にいた時には企画や開発の面で参考になったことが多かった。この点で紙面に何らかの形で貢献でき、かつそれが閉鎖的な出版業界が電子出版に対する意識を変えていく風穴を開けることにつながっていけば嬉しい。

送ってこられた添付記事を確認すると、確かに社名も私の実名もきっちり載っていた。それほど大きな記事ではないが、インパクトは大きかったみたいでブログへのアクセスも急速に伸びている。取材の問い合わせも最近急にあちこちから入るようになったし、やはり今年は電子出版元年となるのであろう。これまではあまりメディアへの露出というのは控えるようにしていたのだが、電子出版2.0の第一人者という自負のもとにこれからは積極的に取材などにも応じていきたいと考えている。これには大義がある。それはいわゆる垂直統合型のモデルでは、他のビジネスモデルにまして上流にいる「モノづくり」をしている人間のアイデアが、下流にいる人間の行動と潜在的な可能性を抑止することにつながってしまうからである。つまり電子リーダーを作っている人たちの意識を変革していかなければ、私が意図しているクリエーター支援、ユーザー作成のコンテンツの増加による電子出版市場の裾野開拓という目標が達成されていかないのだ。(かつてのMP3プレーヤー市場を想起して頂きたい)

そういう意味で現在抱えている某PCメーカーとのコラボによる電子ブックリーダーのODM開発のプロジェクトなどはまさに、願ったり叶ったりの状況である。今アマゾンが手薄なアジア市場は莫大な人口を抱えている市場であり、私の秘策でこの市場で覇権を握ることができると考えている。そしてそこから欧米のユーザーを取り組んでいくのだ。やれ、リーダー市場はレッドオーシャンだとか、パブリックドメインがどうだとかこうだとか、そういう話にこの莫大なポテンシャルをもつ市場を限定させていく必要はまったくないのだが、まだまだ一般的にはそういうメディアのありきたりな論調がまかりとおっている雰囲気がある。横文字文明の企業が複雑な漢字文明の市場に取って入るのは容易なことではない。そしてアジアで大量の流行コンテンツを有しているのはやはり日本なのだ、日本こそコンテンツ文化の旗手としてまずはアジアで、そして欧米に対してリーダーシップを取っていくべきだというのが私の持論であるし、他の極東アジア諸国の方々と会話をした経験からも恐らくそれを嘱望していると思う。(極東アジアの島国が世界第二位の経済大国に登りつめたその実績は、アジアの諸国のいわば誇りである。これからは経済的には落ちていく一方だと思うが、文化的に日本は先進国家としての振る舞いを続けていくことで当面はその存在意義を確固たるものにできるはずだ)

去年から電子出版市場をにらんできた私に言わせると、市場は間違いなく拡大の一途であり、電子出版はコミュニケーションやいわゆる「表現の自由」を強力に、かつボーダレスに実現する可能性を帯びている。例えば、今月の当社のコンテンツの売れ行きがそれを如実に物語っている、元日に家からネットで売上を確認した際に驚いたのだが1日だけで先月の売上の7分の1くらいのセールスが立っていた。昨日は仕事始めだったが、それまでにも売上は順調に増加し、本日の時点でなんと対先月比で35%近い売上になっている。
データは嘘をつかない。またこれについては、現在コンテンツ案が列を成して待っている状況で、コンテンツの数が先月から比べてほとんど増加していないという背景もある。

(それでも売上が伸びるのだから、今アイデアとしてあがっている数千のコンテンツがキンドルストアを始めとするオンライン書店の書棚に並ぶ日が待ち遠しくて仕方が無い)これから市場が成熟していくにつれて、他にも市場ができてくるに違いないが、当社はコンテンツホルダーとしてそれぞれのストアに展開していくことができる。売上は累乗増加となっていく。自前の電子ブックリーダーを開発する意図も、そこに我々のような出版社がいることのメリットがとんでもなく大きいからだ。(ハード開発の減価償却はどうするんだという声も聞こえてくるかと思うが、勿論これについても背後のプランとして世界最大の市場に展開する案がきっちり練りこまれている、提携先となる企業も世界一の携帯キャリアである。世界一の人口を要する中国市場以上にブックリーダーを販売できる市場など存在しえない)今月日本に行って、メディアの取材のみならずコンテンツ提供およびプラットフォーム提供のパートナー(中には超大物もいて、この方とのコラボを私は嘱望している)と会う予定で現在スケジュールを調整しているのだが、徐々に全貌が明らかになる日が近づいており待ち遠しい限りだ。

少し話はそれるが、巷では(WSJをソースとする)アップルが近日公式リリースするとされている新型タブレット機器についてのニュースが持ちきりだ。デザインはかっこいいが、値段が1000ドル以下とかなり高いものになるとか。私は現時点でこのようなタブレット機がどれだけ市場で売上を上げるかについてはまだ明確なアイデアをもっていない。

というのも、昨今盛り上がっているネットブック(もっとも常時ネットにつながらない、いわば「似非ネットブック」も多いのだが)の市場が熟成する前にこのタブレットとぶちあたってどちらかが消えてしまうのではないかという懸念があるからだ。大型タブレットは持ち運ぶには携帯電話よりもかなり不便であるので、常時持ち歩くスタイルにしようとすると、持ち運ぶカバンが変わるなどライフスタイルの変化を余儀なくする場合があるかも知れない。また、iPhoneユーザーが並行してタブレットを使い始めると、なんとなく使用目的が一部重複するようにも思うし、意外に便利であれば今度はネットブックだけでなくラップトップ市場まで潰してしまうのではないか。デスクトップは最近アメリカで流行しているBoxeeなどの影響で、文書作成作業目的以外には使われなくなってくる傾向がある。(すでにHDTVとインターネットの融合はかつてMSが狙っていた「MediaCenter」の地位を完全に奪いつつある。AppleTVのハックツールであるATVFlashとBoxeeの組み合わせはTVでTwitterやFacebook、あるいはiTunes以外のメディアセンター(VEOH、JOOSTやNetflixなど)へのアクセスを容易なものとし、何より操作性があの単純なアップルTVのリモコンでできてしまうほど快適なのだ)いずれにせよ、このタブレットPCならぬタブレットMacにも電子出版機能が搭載されるというから、こちらも期待できる。(個人的な希望としてはAppStoreとは別枠でPublisher枠を設けてもらいたいし、印税をAmazonのそれ(35%)よりは高いものにして欲しいと思っている)

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。

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  1. […] 第1章 日経産業新聞の取材記事 – 電子ブック開国論 (11) | 立入勝義の意力(いちから)ブログ - 北米発IT情報・電子出版・ソーシャルメディア 2010.07.08 at 10:02 AM 2 […]

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