書評: 日本人の矜持(きょうじ) 藤原正彦(新潮社)

「国家の品格」が大ベストセラーとなった数学教授の藤原正彦先生だが、個人的にはその前作「祖国とは国語」が大好きである。

前回の日本出張中に、表題の本をアマゾンで発見して即座に購入。

対談相手は

齋藤孝
中西輝政
曽野綾子
山田太一
佐藤優
五木寛之
ビートたけし
佐藤愛子
阿川弘之

と早々たるメンバーのこの書籍、すでに読まれた方も多いだろう。

対談集なので読みやすく、また内容が非常に濃い。ホストである藤原教授の見識の広さや考えの深さに感心させられるばかりでなく、対談相手の意外な一面なども発見することができるというのが嬉しい。例えば、ビートたけしとの対談では、思いの外数学の話で深い話がでてくるので、彼が理数系出身だったことを思い出した。
前編を通じて語られる教育改革については、同調する点が非常に多い。右に偏った意見が多いと思われるかも知れないが、ここまでリベラル化してしまった日本では、これくらいのほうがちょうどいいのではないか、と思う。

齋藤孝教授との国語論は、もっともだと思わされることが多く、この両者をもってしても体制側の意見を変えることは難しいということで絶望しそうになる。英語教育との関連性についても、ごもっともで、本当に日本は英語教育の手法については徹底的に変革すべきだ。(これについて来月上梓する「ソーシャルメディア革命」でも触れた。日本はアメリカと組むよりは、イギリスと組むべきだという「日英同盟復活論」についても、先日のイギリス出張で、アメリカにはないイギリス人の良さを実感した私には強く響いた。

作家の曽野綾子氏や阿川弘之氏と繰り広げられる教育談義も素晴らしい。大学生になるまでに、ぜひこの本を読んでもらいたいものだ。
「起訴休職外務事務次官」の佐藤優氏との「情報談義」もリアルで面白い。
また、歌が大好きな私にとって、五木寛之氏(北朝鮮からの引き揚げ体験をもつ)との対談ででてくる、日本の歌謡曲の美しい歌詞や悲しい曲がもつすばらしい「癒し効果」など、納得させられるものも多い。

涙を流すほど勇気づけられる対談集というのは珍しく、タイトルどおり日本人の「誇り」を再発見させてもらえるすばらしい本である。まだお読みになられていないかたは、ぜひともご一読頂きたい(廉価版の文庫本も出ている)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。