コンゴウィークの紹介ビデオと日本独自の視座について ~キンシャサへの手紙

ソーシャルメディア時代への移行に伴っては、佐々木俊尚氏がキュレーションに関連して指摘されるような「視座」が必要になってくる。これまで私たちはテレビのワイドショーや新聞、週刊誌に代表されるマスコミの報道ばかりが私たちにとって重要な問題だと思ってきた。

だが、例えばMixiやYahoo!のニュースヘッドラインに流れる情報の大半はゴシップニュースである。アクセスが集まるのだから仕方ない。
戦後日本人は経済成長の過程で多くのものを失ってしまったのではないだろうか。つい最近まで自分たちも貧しかったという事実を、忘れようとしているのではないか。

話はそれるが、これは、例えば今韓国が経済成長を遂げている過程で、彼らが本音はさておき、あまり日本をライバル視するような発言や態度を取らないことにも関係している。(いっぱい言ってるのは知ってるが)
つまり、韓国は日本との競争自体を「過去の遺物」とすることで、一つ先のステージに到達していると誇示しているかのように思える。

日本人(の多く)が世界の貧困や飢餓、紛争といった問題に対して無関心なことの原因はいくつもあると思うが、最も肝心なのは「つながり」がないことだ。いくら遠い国でも、自分の家族が関わっていれば自然と興味は湧くものだ。アメリカを見ていると、その移民政策がこの国の多様性をいかに支え、そして世界に関心をもたせているかがよく分かる。そして、日本に「視座」の多様性をもたらしてくれるのは、日本に住む外国人と海外在住の日本人だと思っている。

次に紹介するコンゴウィークのビデオでは日本の大学生を巻き込んで「外国人」が啓蒙に努めているのが伺える。


(*私が今携わっているコンゴ本の翻訳は、この中にでてくるフレンズ・オブ・ザ・コンゴにも関連しているものだ)

もともと発言するのが苦手な私たちは、自分で理解できない状況が眼の前で起こると黙ってしまう。そして、誰かが声を上げるのを待つ。
しかし、人間は理性的であると同時に感情的な生き物である。本を読んで主人公に共感して喜んだり、ワクワクしたり、憤ったりするのと同様に、目の前で死にそうな人がいれば悲しくなって当然である。それが誰かは関係ない話だ。現在起きている世界同時革命やコンゴの状態、あるいは中国のネット革命対策について、自身の見解を述べるのに、専門家の知恵は必要ない。そして、いまやネットでいくらでも調べ物はできるし、その気になれば論文や本まで書けてしまうくらいだ。

これから私たちが世界に向けて、個人の「視座」を確立するのと同様に、日本人としての「視座」も確立していく必要があるのではないか。
そう考える時に、今の日本の無関心、もっと直接的な表現をすれば「冷たさ」が妙に気になる。核家族化がもたらした弊害なのかも知れないし、敗戦から経済成長につながる過程でどうしても無視しなければならなかった感情があったのかも知れない。
日本の企業戦士、コーポレート・ウォーリアーとして頑張ってきた団塊の世代、彼らがいたのは戦場であり、そこでは個人の感情など無視されて然るべきだったのかも知れない。その犠牲と努力の土台の上で、今の日本の豊かさと平和がある。

平和とは何か、それは芸能人のちょっとしたゴシップでみんなが騒げることであり、世界で革命が起きてあちこちで死傷者がでてるのにも関わらずパンダがきたといってほんわかできる、そういう環境があるということだ。もちろん現代人として多くのストレスを抱えている部分の裏返しでもある。世界中で誰も乗りたがらないような満員電車に毎日乗って通勤する日本人は、それでも二酸化炭素を減らせと言われれば、海外からホットエアーを買ってでも、世界の基準に対応しようとする。世界一の経済大国であるアメリカが京都議定書を批准していなくても、である。

私がPlaying for Changeやコンゴの問題に関わってから、いくつかの素晴らしい出会いをした。世界には、本気で世界の平和を願って行動している人たちが何人もいるし、日本の中にもそういう人はたくさんいる。憲法改正をするかどうかはさておき、現存する平和憲法と唯一の被爆体験を通じて、日本は独自の「平和」観を視座としてもってみるというのはどうだろう。

日本ではソーシャルメディアが普及しない、という観点でブログのエントリーをあげたのが「ソーシャルメディア革命」の執筆につながった。
そういう体験をもった著者として、日本に喚起したい「視座」がいくつかある、それがこの平和観である。平和ボケ慣れしてしまった、あるいはそう思わされてしまった日本だからこそ、ソーシャルメディアに移行するには大きな障壁がいくつもある。しかし、その移行、すなわち「革命」が達成された時にこそ今の日本は変われるのではないか。ソーシャルメディアと「世界の平和」についてぜひ考えて頂きたい。そして、その前にもう一度自身に問いかけてみよう、「果たして日本は平和な国なのか?」、と。
かつてのローマではないが、極度の平和を享受している日本はある意味世界に先駆けて、本当の平和とは何か、について学べる位置にいるのかも知れない。そして、今このブログやツイッターで起こっていることのように、海外在住の日本人が日本に向けて情報を発信するということが、その革命のきっかけになることを切に願いつつ、「ただ言いたいことだけ」言ってます(笑)。

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日本で起きる革命こそが、本当のソーシャルメディア革命かも知れない。。。

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。