第3章 理想の電子ブックリーダーとは – 電子ブック開国論 (33)

電子化の先例実は日本ではとっくに普及してた電子出版~発想の転換

発想の転換というのは非常に重要であると思う。これは筆者が最近傾倒している禅の思想にも通じるのだが、人間はともすれば自身のルーチン化あるいはマンネリ化した社会生活の中で、知らず知らずの内に固定観念に支配され、そのことに全く気づかないでいるということがよくある。本書の目的は電子出版についての筆者の体験談の共有と市場全体のちょっとした啓蒙貢献であるので、脱線と思われるのを承知で少しこのことについてまず触れたい。

例えば英語である。筆者は10歳の頃に友人の母から当時の親友3人ほどと少人数レッスンを受けたのを皮切りに英語を学び始めた。それから有名なアカデミー出版の「家出のドリッピー」などの教材や、マーク・ピーターセンによる「日本人の英語」シリーズなどに代表されるような日本人の英語学習に関しての本を読み漁った。特別英語が好きというわけではなかったが、当時は外交官や国連での勤務を志望していただけに英語を避けては通れないという気持ちが強かった。(同時にタイピングの重要性も感じて中学を卒業する際に母からワープロを買ってもらって本格的なタイプの勉強ができるようになったことにも心から感謝している。

文章を書くのは好きだが、あまりにも字が汚い私にはワープロはまさに竜が水を得るごとくのツールであったのだ)それから高校も大阪府に当時初めて設置された「国際教養科」という特別なカリキュラムの学校に入学した。(この特別なカリキュラムは府下では千里と住吉の二校でまず試験的に導入され後に拡大したのだが、筆者が行ったのは後者)その後アメリカに留学し、UCLAという大学を卒業してからビジネスを続けるにいたるまでずっと英語を使い続けている。もちろん英語での会話には不自由はしないし、2000年の帰国時に初めて受験したTOEICでも970点という自分でも信じられないような高得点を得た。 (おかげで二度と受けることはなかった。スコアが下がる可能性の方が高いし。ちなみに同時に受けた英検1級は不合格だった)

そんな筆者から見ても英語は本当に難しい言語であるという思いが強い。これに追い討ちをかけるのが、日本人ならほぼ誰でもがもっている一つの壁である。それが「ペラペラ」というやつだ。筆者の周りには英語を自在に操りビジネスでも日常生活でもほぼ不自由しない人物が両手では足りないほどいる。しかし、彼らに対して「あなたは自分で英語がペラペラだと思いますか?」と聞いたらほとんどの人物は「NO」というだろう。傍から見ると、どう考えても「ペラペラ」なのに、何故か?答えは簡単である。「ペラペラ」という言葉に定義がなく、本当にこの言葉自体が薄っぺらい「ペラペラ」な言葉だからだ。だから英語を勉強する際には「ペラペラに話せるようになりたい」などとは思わずに、具体的な目標をもつことだ。それがTOEICでもいい、発音に対してでもいい、好きな分野について語れるだけの知識を得ることでも話せることでもいい。あと、ついでに一つだけアドバイスすると「発音」の勉強に注力したほうがいい、もっと理論的に、である。筆者は英語を話す際にネイティブと非ネイティブの間にある決定的な違いはスピードと発音だと思っている。

ちなみに大事なことなのだが、ここでの発音という意味は「アクセント」ではない。
日本的なアクセントが残ってしまうのはむしろ日本人的でいいと私は思っている。しかし、通じないことの大半はアクセントではなく、「発音が間違っている」という事実であることに気づくべきだ。また発音は舌の位置や口の開き方による「相対的」なものであることが多く、それぞれの音には相関関係がある。これらが一定していればアクセントが多少強くても英語は十分に通じるのである。(聞いている者の耳が慣れるのにしばらくかかるかも知れないが)これと似たようなモノにゴルフで初心者を悩ませる俗にいう「100の壁」というのがある。あまりにゴールを意識するあまりに自分で壁をつくってしまうというやつだ。また少し違って例になるが逆の影響がでているのが「関西人バイリンガル説」と筆者が名づけた現象である。これは、(実は関西人に限定されることではないのだが、関西人が標準語を話すのが苦手だということから、これがもっとも強いと思っている)関西人はテレビのニュースや読み書き上では標準語を完全に理解しながら、それらを話し言葉にまったく影響させないということ自体が、一種のバイリンガルだ、というものだ。半分冗談みたいな説だが、実は脳の切り替えという意味ではここで行われていることというのは、外国で生まれた日本人の子供たちとなんら変わるところがないのではないか。片親が外国人だったりした場合に、例えば子供に日本語で話しかけても返答が英語などの違う言葉だったりするのを耳にしたことがないだろうか。要はあれである。

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。

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